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2008.03.12

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世界マスターズ2回目の挑戦!表彰台への道 和地恵美

 昨年、マンチェスターで行われました世界トラック自転車マスターズに参加して、勝てたものの海外の選手との圧倒的な基礎体力の差を感じました。来年もう一度勝つためには基礎体力をきっちりつける必要があると感じました。 そこで私は帰国してすぐ、幅広い選手のコーチングに定評のある北見先生の門を叩きました。私のような若くなく、有職主婦選手にふさわしいメニューを考えてくださると思ったからです。先生は私がトラック競技においては初心者であることも加味して、無理なく着実に力をつけられるようなトレーニングを考えてくださいました。

 翌月11月から筋力トレーニングを開始、順調にメニューをこなしていました。しかし、昔、陸上選手時代に痛めた古傷がわざわいし、1月の末に股関節軟骨骨折をしてしまいました。ここは以前に2度手術をしたところで、疲れが溜まると痛むので様子を見ながら、用心しながらだったのですが……。

 そこで、気持ちを切りかえ、安静が必要であれば、気にしていた視力回復手術を受けて、メニューを変更し、焦る気持ちをなだめながら、約一ヶ月、過ごすことにしました。

 迎えた3月。不安だらけでレースに参加して、しかしながら何とか走れそうな手ごたえをつかみました。4月のチャレンジ・ザ・オリンピックでは3,000m個人追抜で自己ベストを更新。6月の西日本実業団で500mTT優勝。8月の関東選手権では38秒台の自己ベストをマークしました。基礎トレーニングが順調に実を結びました。

 そして、目標であるマスターズの10月。私の勤める小学校は、通常授業に加え運動会という一大行事があります。学校から帰宅すると座り込んでしまう疲労困憊状態で毎日を過ごし、なんとか13日に開催地シドニーに入ることが出来ました。

 レースの前日、発走機を使ってスタート練習をする機会があったので、数本走ってみました。気負いがあったり、タイミングがつかめなかったりで、ようやく5本目で納得できる感覚がつかめました。ほっとしてブースに引き上げてくると、隣のアメリカ代表女子選手が「今のはすごくいい走りだ」と言葉を掛けてくれました。他にもどこがいいか色々言ってくるので驚きました。よく観察しているなと感心し、ライバルなのに相手を褒める度量の大きさに感動しました。殆どのアメリカ代表選手は金メダルを獲り、その強さを見た気がします。

 さて初日、500mTTは45-49歳のカテゴリーに出場し、38秒前半のタイムで世界記録を更新するのが目標でした。ギアを一枚重くして、「かかる」感じを掴んでベストタイムを狙いました。
 私の出走は一番最後で、38秒間のイメージを高めてスタートラインにつきました。カウントダウンが始まり、5.4.3.2.1.スタート!!渾身の力でハンドルを引いて思いっきりペダルを踏んで「よし!トップスピードまであがった!!」と体感したかったのですが、それが無いままゴールしてしまいました。満足の走りではありませんでした。
 う~ん、と首を捻りつつ電光掲示板を見ると39秒375の文字が…。がっくりしながら戻ってきたら、会場から大きな拍手が聞こえました。「あぁ、あれ?そうか!優勝したんだ!」と喜びが湧き上がってきました。目標タイムには届きませんでしたが、0.2秒更新の世界新記録でした。
 更新できたのは僅かでしたが、これはきっと「まだまだ頑張れ!」ということなのだと思いました。金メダル獲得は、うれしさよりも安堵感が大きかったです。

 次の日、二連覇のかかった個人追抜では、脚が回らず優勝どころか、入賞も逃してしまいました。とても残念な結果に、昨日のうれしさも消えてしまいました。「そんなことでは~~~せっかくのマスターズが・・・・」と、気持ちを切り替えて3つ目の種目、スプリントで頑張ることにしました。
 私はこの競技を国内で2回しかやったことがなく、全くのチャレンジャーです。戦法もわからないので、男子の対戦を現地で観察研究しました。そして私の戦法は、直線の短い250mバンクでは「いろいろ考えず行くしかない!」と決めました。
 1回戦は、500mTTで破った相手との対戦でした。スプリントは3周で勝敗が決まるので、ラスト600mで奇襲作戦に出ました。まさか1周目からスプリントするとは考えないと思ったのです。作戦通り逃げ切りました。1本走って身体が壊れる思いをしましたが、幸いマスターズは休息時間を長くとってあるので、次のレースまでに回復できました。
 準決勝の相手は身体の大きな50歳過ぎのアメリカ代表選手で、走ってすぐ、その迫力に負けました。私より重いギアをぐいぐい踏み込んでいるその走りに、ひたすら驚きました。

 最終日チャレンジ種目のスプリントでベスト4に残るとは夢にも思わず、帰りの飛行機を1日変更して、3-4位決定戦に出場することにしました。
 落ち着いてスタート!私の唯一の戦法、先行逃げ切りをねらい、思い切って早めの先行!!ラストの直線で、後ろの選手が猛スピードでダッシュ!私も渾身のチカラを振り絞りフィニッシュ!差されることなく1着でゴール!!「よかった~」と、ほっとした瞬間、ワァッと場内から歓声が上がり、電光掲示板を見ると、12秒540の表示が!
 5年前にオランダ代表マリオン・バックス選手が出した世界記録を1秒以上も縮めたのです。今回、私の予選のハロンタイムが13秒478でしたので、私はとてもスプリントがヘタなのだと、つくづく思いました。

 すべてのレースが終了し、会場では色々なチームの選手と仲良くなり、多くの財産を得ました。ジャージを交換しながら自転車談義に花を咲かせるのは、とっても楽しかったです。特に隣のブースにいたアメリカの選手とは親交を深めました。一緒に応援し、励ましあい、レースが終われば抱擁……。国内の大会ではなかなか経験できないことです。
 仕事や家庭を持ちながら競技を続けるのは大変ですが、5年後、10年後、彼女たちのように、楽しく力強く自転車に乗っていたいと憧れを持ちました。
 今後も、年齢を重ねても、チャンピオンジャージに恥じない走りを目指したいと思います。

 今回のシドニーマスターズで、金、銅、合わせて2つのメダルを持ち帰ることができました。諦めかけた時もありましたが、北見先生をはじめとするたくさんの方々が支えてくれたおかげです。心から感謝いたします。
 今の気持ちを大事にして、また来年に向けて頑張ろうと思います。これからもどうぞ宜しくお願いいたします。