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ホーム > 雑誌掲載情報 > <キーワードで知る強化法 第9回>血液検査:健康診断などで血液検査を受けたらデータを手元に保存してトレーニングに役立てよう【サイクルスポーツ 2003年12月号掲載】

<キーワードで知る強化法 第9回>血液検査:健康診断などで血液検査を受けたらデータを手元に保存してトレーニングに役立てよう【サイクルスポーツ 2003年12月号掲載】

仕事場や学校で年に一度、健康診断を受けると思う。そのときに血液検査の結果から「コレステロールが多いね」とか「肝臓が弱ってるね、飲み過ぎだよ」なんて言われた経験がないだろうか?

 今回は「血液検査」について。「オレはバイクに乗っているから健康だ、大丈夫!」という人でも、血液検査をすると基準値から外れて再検査になったり、医者から「少しは運動しなさい!」なんて言われることがある。その根拠は血液データが数値で証明して、警告を発しているからなのだ。

 たとえば総コレステロール(TC)、中性脂肪(TG)が基準値を超えると高脂血症と呼ばれ、放っておくと心臓病や脳卒中などの最大の原因となる動脈硬化に進行する。これらは運動不足や肥満、動物性脂肪の取りすぎで起きることから、医者に「運動しなさい!」と言われてしまうのだ。

 空腹時血糖値(BG・BS)が基準値を超えると糖尿病が疑われ、腎症、神経障害、網膜症、動脈硬化症などさまざまな合併症も現れる。これも肥満、運動不足、エネルギー過剰摂取、ストレスなどが原因と言われることから、やはり「運動しなさい」になる。

 尿酸値(UA)は正常な状態であれば、新陳代謝の老廃物である尿酸は、腎臓から尿の中に排泄される。だが、基準値を超えると、尿酸がたくさん作られすぎたり腎臓の障害で排泄が不十分になると血液中に余分にたまることで高尿酸血症になる。この尿酸値が8㎎/dl以上になると、尿酸が尿酸塩という細かいガラスの破片のようになり、関節やその周辺に沈着して激しい痛みが起こる。これがいわゆる痛風。原因は、プリン体を多く含むおいしいものの食べ過ぎやアルコールの取りすぎ、激しい運動でも高くなる。ちょっと飲み過ぎで肝臓の機能が気になる人はジーオーティ(GOT)とジーピーティ(GPT)の値をチェックしておこう。

 

 ここまでで言う「運動」とはロードトレーニングのような長時間続ける運動で、しかも低強度で行うものを指す。ギヤを軽くしてLSD(ロング・スロー・ディスタンス)のトレーニングなどをすると、血液性状の活性化が図られる。

 6~8週間のトレーニングでTC、TGと空腹時血糖値は10~15%低い値になることが予想される。また“善玉コレステロール”と呼ばれるHDLコレステロール(高比重リポ蛋白)が細胞に沈着したコレステロールを取り込みながら、全身を巡って肝臓に回収する働きがあり、このHDL値が逆に増加すると運動効果があったと考えることができる。

 HDLコレステロールはウエイトトレーニングや短距離のインターバルトレーニングでは変化しないので、どのタイプの選手であってもロードトレーニングは必要。

 水分不足で無理なトレーニングをすると、血液粘度の指標であるヘマトクリット(Ht)が高くなり、その数値が50%を超えると血管の硬化や梗塞がおこる危険性が高いとともにドーピング検査にも抵触してしまう。

 赤血球(RBC)やヘモグロビン(Hb)が基準値よりも低い値になると貧血を起こしやすくなる。クレアチンキナーゼ(CPK)の値が基準値をはるかに超えると、エネルギーを消費するどころか筋肉を消費し始めている可能性が出てくる。

 トレーニング中にハンガーノックになったときや、脱水のときはクレアチンキナーゼの基準値50~200IU/リットルに対して6000IU/リットルに達することもある。私のクライアントでも普段のトレーニングで600IU/リットルに上がっていることがあるので、効率よくトレーニングする為に水分量が不足しないように注意している。

 

 今、手元に自分の血液データがあるなら、どれか数値に着目し、それをもとにオフのトレーニングを工夫しよう。また、来期初めに血液検査をして目的どおりにそれができたかなどを基準にして、トレーニング方法を考えてみよう。