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<キーワードで知る強化法 第7回>血圧:きついトレーニングをする際には「血圧」に対する留意が必要だ【サイクルスポーツ 2003年10月号掲載】

スポーツクラブへ行くと、運動の前後に体重、血圧、心拍数を計ることを勧められる。体重に関わる体脂肪の話を前々回、心拍数のことを前回に説明したが、この血圧とは何か。今回は「血圧」をキーワードに考えていこう。

 

 四足歩行の動物は心臓から脳へ血液を運ぶのにそれほど強いポンプの力を必要とせずに血液を循環させることができる。

 しかし、直立した人間は高い頭部の脳まで重力と血管の抵抗に打ち勝って血液を押し上げるとともに、身体の隅々まで送り届けなければならない。また、運動すれば血圧は必ず上昇する。

 まず、血圧の測定方法は、上腕部に帯状のカフをまき、加圧器によってカフに空気

を送り込む。その際、圧の強度を水銀柱の上がった高さで計測する。聴診器で脈音を聞きながらカフに圧をかけていくと、やがて音が聞こえなくなる。そこから、徐々に空気を抜いて圧を下げていく。途中で脈音の聞こえたときの圧が収縮期圧(最高血圧)であり、さらに減圧を続けていくと明瞭な脈音が続いたのちに音が消失する。このときが拡張期圧(最高血圧)である。

 その仕組みは、カフを強く締めると上腕動脈が上腕骨に押し付けられ血行が止まって脈音が聞こえなくなる。徐々に圧を下げていくと動脈流が狭いところを無理に通ろうとするので、大きな音が聞こえてくる。さらに緩めていくと、血流が自由に通り抜けるので音は聞こえなくなる。

 運動中の血圧は、特に収縮期圧(最高血圧)は運動強度にほぼ比例して上昇する。たとえば、収縮期圧すなわち最高血圧と心拍数の関係は、心拍数10拍増加に対して、男子では約10mmHgの上昇、女子では約8mmHgの上昇がある。

 この関係を運動中に当てはめてみると、安静時の心拍数70拍、収縮期圧120mmHgの男性が、ロードトレーニングの最中に心拍数が170拍になる山を上ったとすると、収縮期圧220mmHgの圧力が血管にかかっていると想像できる。安静のときには起こり得ないほどの圧力がかかっているのだ。

 高齢者では、若年者に比べて同一心拍数でも血圧上昇が高いことがある。それは大動脈の弾性が劣ることや末梢血管の拡張が十分でないことに起因すると考えられる。

 ロードトレーニングのような持久的運動とは対象的に、ウエイトトレーニング時の血圧は、心拍数に関係なく著しく上昇する。たとえば、下肢のトレーニングのほうが血圧上昇が高く、アイソトニック(等張性運動)動作では収縮期圧ばかりでなく拡張期圧も著しい上昇をする。アイソメトリック(等尺性運動)動作では、さらに上昇する傾向がある。

 ウエイトリフターのトレーニングでは、収縮期圧480mmHg、拡張期圧が350mmHgまで上昇した例もあるほどだ。

 ところで、この見慣れない血圧の単位mmHgであるが、これは水銀柱を何mm押し上げる圧力がかかっているかの指標。実際は血管のなかは水銀ではなく血液が流れているので、便宜上水銀を使っているのだが、水銀と血液の比重が約13対1であることを考えると、たとえば収縮期血圧200mmHgの圧力は<200×13=2600mm=2.6mm>の血液を吹き上げる圧力が血管にかかっていることになる。

 この高圧時のリスクを少しでも減らすために、きついロードトレーニングやウエイトトレーニングをするときには、必ず15分以上のウォームアップをして血管を拡張させ、急激にストレスをかけないようにしてから始めよう。

 また、運動強度を確認するときに心拍数を用いるのと同様に、心拍数から血圧の状態がどのようになっているかを自覚しながらトレーニングに励んでもらいたい。

 

 運動中の血圧を詳しく確認したいときは、心肺運動負荷テストを行い、実測値を確認の上トレーニングに生かしていこう。