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ホーム > 雑誌掲載情報 > <キーワードで知る強化法 第6回>心拍数:運動の強さや強度によって変化する心拍数 トレーニングの目安となる重要なデータだ【サイクルスポーツ 2003年9月号掲載】

<キーワードで知る強化法 第6回>心拍数:運動の強さや強度によって変化する心拍数 トレーニングの目安となる重要なデータだ【サイクルスポーツ 2003年9月号掲載】

「トレーニング中に心拍数が200拍まで上がった」「寝起きの心拍数が40拍になった」。こんな話を聞いたことがあるだろう。この心拍数ってなんだろう。何を意味するのだろう。今回は「心拍数」をキーワードに考えてみよう。

 

一般に安静にしているときの心拍数は1分間におよそ65~80拍。運動をすると、その心拍数はだれでも上がる。運動をするということはそのとき使う筋肉が筋収縮するということだ。短時間、1~2秒であれば筋細胞中に蓄えたエネルギー源ATP(アデノシン三リン酸)を必要とし、1分間前後であればグリコーゲンをエネルギー源として動くことができる。

しかし、多くの運動の場合は呼吸して取り入れた酸素が肺から血液中に入り、ヘモグロビンと酸素が結合して筋肉までたどりついて酸素をエネルギー源とする。運動がより長くなったり、強度が上がっていけば、その血液の量(心拍出量)が多く必要となる。

そのため、心臓がポンプ機能として早く動くことで運動できるように酸素を含んだ血液を送っているわけだ。

運動強度が限界に達したとき、筋血流量が増加し、安静時には使われていない毛細血管も必要に応じて張りめぐり、最大の心拍出量になる。心拍出量は1回拍出量と心拍数を掛け合わせた値<心拍出量=1回拍出量×心拍数>で決まる。だから、1回拍出量または心拍数が上がるようにトレーニングすれば運動時に有利になるわけだ。

最大心拍数が増加するメカニズムは、心臓の機能自体が変化してより高頻度で収縮、弛緩ができるようになること。または、最大心拍数が低く抑えられていたものがトレーニングにより乳酸耐性などが高まった結果、有酸素能力高まり、さらに強い運動ができるようになることだ。

最大心拍数が低く抑えられる要因としては、組織の乳酸耐性などの心拍数以外の因子がある。

トレーニングは100~120拍前後から30~60秒の短時間でのダッシュをインターバルを長めにして行う。効果基準は、ダッシュ1回ごとの最高心拍数が上がっていくことで判断する。目標は<220-年齢>以上になること。

1回拍出量を大きくするためには、AT(無酸素性作業閾値)またはOBLA(乳酸蓄積閾値)の強度長で時間運動することで、そのその運動継続により身体が適応しようと変化を起こす。これが、いわゆる“スポーツ心臓”で、運動への適応として心筋の肥大または心臓が厚くなると同時に収縮力が強まり心拍数の増加とともに心拍出量も増加すること。毛細血管の発達から心筋への酸素供給も十分に行なわれ、高強度の自給的運動にも耐えうることができるのだ。

1回拍出量を大きくする具体的運動は、AT、OBLAの強度または130~150拍の少し余裕のある運動強度を120分以上続ける。長時間続けることで身体の適応能力を助長させる。効果基準は朝、寝起きの安静時心拍数が減っていることで判断する。

ロードトレーニングで同じコースを走ったときに心拍数が以前より上がらなければ、1回拍出量が増えたと考えてよいだろう。

1回拍出量は一般安静時で70~80ml。運動選手であれば安静時で110~120ml。運動時には150~200 mlに達し、最大で心拍出量は毎分40リットルに達し(最大1回拍出量200 ml×心拍数200=毎分心拍出量40リットル)一般人の2倍になる。

ロードレース、トライアスロンなどエンデューロ系であれば1回拍出量を先に増やして心拍出量をあげていこう。

スプリント、タイムトライアル、ポイントなどのトラック系であればインターバルトレーニングを取り入れて心拍応答が速く、レスポンスの良い心臓を作ってから心拍出量をあげていこう。

心拍数110~170拍の範囲では運動強度と比例関係にある。だが、その他の強度では、疲労、神経緊張などで心拍数は容易に変化するので、100拍以下の低強度の心拍数と最大心拍数の界隈では何らかの影響を受けている可能性があることを考慮してトレーニングしよう。