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<キーワードで知る強化法 第11回>LSD:オフシーズンの基礎トレーニングメニューとしてポピュラーなLSDとは?【サイクルスポーツ 2004年2月号掲載】
年も明けて“そろそろロードトレーニングへ行こうか”という人も多いと思う。けれども、まだ冬の真っ最中で、指先やつま先は痛いし、スピードも上がらないし……。そんなときにはLSDトレーニングが最適だ。
今回は、気軽に使われるようになってきた言葉「LSDトレーニング」ってなんだろう、何のためにするのだろうか、ということを考えてみることにする。
正式名称としてスポーツ生理学にもトレーニング理論にも出てこない言葉であるが、マラソン、トライアスロンおよび自転車ロードレースなど、長距離種目のトレーニングには必ず入ってくる。
LSDは“ロング・スロー・ディスタンス”の略。長時間、ゆっくりと、長い距離を走るトレーニング方法だ。シーズン中のトレーニング強度よりも低く、レースより長い距離をまたはレースより長い時間をかけて行なう。
LSDトレーニングによって得られる生理学的効果は、主として心肺機能の向上、心臓血管系や体温調節機能の向上、毛細血管の発達、筋肉細胞内のミトコンドリアのエネルギー生産能、骨格筋の酸化能の改善、エネルギー源としての脂肪利用の亢進がある。
まさに有酸素運動の長所をすべて引き出すことができる。
しかし、LSDトレーニング時の強度およびスピードは競技時より低いため、レースに求められる筋繊維の神経動員パターンの刺激にはならない。
LSDは、レースシーズン中には乳酸など疲労物質除去のための積極的休息として行なうこともあるが、主としてオフシーズンの基礎トレーニングメニューとして取り入れたい。
それでは、なぜ、強度を落としてゆっくり長くなのか?
1回拍出量を大きくするためにはAT(無酸素性作業閾値)またはOBLA(乳酸蓄積閾値)の強度で長時間運動することで、体が適応しようと変化を起こす。これがいわゆるスポーツ心臓だ。これは、9月号で説明したが、この生理学的変化がLSDトレーニングの目的と一致する。
気温が低く、体を早く動かしにくい時期に、無理やりスピードトレーニングをすれば、体の障害や低効率というリスクを背負うことになる。
そうであれば、持久力の基礎になる心肺機能を高めて、ベースを作った上でシーズンを迎えられるようにLSDを取り入れるのが合理的だ。
LSDの具体的トレーニング方法は、次のようになる。
まず、心拍計が必要になる。AT、OBLAの強度または130~150拍の少し余裕のある「仲間同士で会話をしながら走ることができる」運動強度を、週3回、120分以上続ける。
長時間続けることで、体の適応能力を助長させてゆく。種目はロード走行に限らず、マウンテンバイキング、登山道ハイキング、ウォーキング、スイミングでもよい。大事なことは、強度を上げずに、競走せずに、休まず動き続けること。
時には、サッカーやバスケットなどの球技でもよいが、あまりゲーム性が高いと頑張りすぎて、いつの間にか強度が上がり、長く続かないこともある。
また、強度を低くしたからといっても、短距離種目の選手やオフの筋力トレーニングを頑張って行っている選手であれば、120分間動き続けることは容易ではない。
LSDトレーニングは、最初は週2回の頻度で45分間行なうことから始めて、それが4~5時間続けられるような体を作り上げてほしい。効果を上げるには、3週間は続けたい。
そのころには、体の変化が表れてくる。平坦で楽と思われるコースがいい。途中では休まない、というより休む必要がないペースで走るのだ。
オフの間に、いつの間にか蓄えてしまった体脂肪も一緒にコントロールしながら、トレーニングに取り組んでみよう。