【雑誌掲載情報】Update Information
究極のトレーニングギア、自転車でスリムなカラダに! 【Tarzan406号】
ペダルを漕ぐ。この動作だけを見ると、自転車は下半身をたいして頑張らずに動かすだけのツールに思えるかもしれない。
確かにサドルに座ることで自重の負担は減り、筋肉や関節にかかる負担も減る。あとはペダルを踏みさえすれば、自動的にホイールは回転し、自転車は前進してくれる、ように見える。だが、事はそう単純ではない。思った以上に多くの筋肉が動員されているのである。
ではMTBに跨ってみよう。
まず、ハンドルの位置をキープするために背筋の力が必要となる。体幹部のバランスをとるためには、腹筋や脊柱起立筋の共同作業も不可欠。そして前方を見据えつづけるために、僧帽筋が作動する。
さて、ペダルを踏み込み、MTBをスタートさせてみよう。このとき、誰もが無意識にハンドルを手前に引いているはずだ。稼動しているのは背筋と上腕二頭筋である。
そのまま漕ぎ続けてみれば、すぐにわかるだろう。単に踏み込むというだけの動きではペダルはスムーズに回転しない。踏み込むときには大腿四頭筋、引き上げるときにはハムストリングス、後ろから前方向にペダルをもってくるためには、腸腰筋の力が必要とされる。
どんどん前進し続けよう。一見、同じ姿勢で漕いでいるように見えて、路面の状況や地形、風の影響などによって、刻々と使用される筋肉の部位は変化していく。そう、自転車を乗りこなすということは、すなわち全身運動に他ならないのである。
負担は最小限に。稼働率は最大限に。これほど理想的な全身エクササイズ、そうはあるまい。
運動強度を変えずに長く走れること。これが自転車の強みだ。
「ターザン」はこれまで何度も公言してきた。
脂肪燃焼運動といえば、エアロ。エアロの代表格といえば、ウォーキング、ジョギング、そして自転車を利用したトレーニングだ、と。
ここで改めてエアロの基礎知識をおさらいしておこう。
大雑把に言うと、筋肉は次の2種類にわけられる。収縮スピードが速く、爆発的なパワーを発揮する速筋。パワーは弱いが長時間働く遅筋。前者を主に使用するのが短距離走など、ほぼ無酸素状態で行われる瞬発系トレーニング。一方、後者は長時間の有酸素運動、つまりエアロで活躍する筋肉だ。
瞬発系運動の主なエネルギー源は、筋肉内のグリコーゲン。エアロのそれは脂肪。脂肪が筋肉中に運ばれて利用されるとき、必要不可欠なのが酸素というわけだ。
とはいえ。ママチャリでゆうこうなエアロが実践できるかといえば、残念ながら難しい。車体が重い。同じ姿勢をキープするのがしんどい。ちょっとした坂道でペダルがずっしり重くなり、簡単にへこたれそうになる。つまり長時間のライディングに適したツールとはいえないのだ。
さて、今一度MTBに跨ってみよう。当然、それにはギアがついているはず。ペダルを踏み込むとき重みを感じたら、最初は何も考えず、どんどんギアを軽くしてやろう。ペダルの回転数は確かに上がる。だが、運動の強度は低くキープできる。踏ん張らなくてもスイーッと前進。これなら多少体力に自信が無くても、長時間漕ぎつづけられるというわけだ。
シェイプアップを目的としたエアロを行いたいなら、こんな具合に運動強度よりも長時間乗ることを重視すればよし。最初は、時間にして30分程度漕ぎつづければそれで十分。定期的に続けていれば、心肺能力が徐々に鍛えられ、より強度が高い状態で長時間のライディングが可能になるのだ。
さて、最も効果的に脂肪が燃焼するエアロのエクササイズゾーンは、ご存知の通り、心拍数によって設定することが可能だ。オールアウトしたときの心拍数、すなわち最大心拍数の約40~85%が有酸素運動系のエネルギー回路が作動する範囲と言われている。
ずいぶん幅が広いって?確かにそうだ。だが、トレーニング経験による筋力や心肺能力の違いによって、運動強度と心拍数の相関関係が同一に語れないのも、また事実。
エアロの体感による運動強度は、もうちょいキツくてもいいのでは?というくらい楽に感じる程度のペースがベスト。トレーニング経験者にとっては最大心拍数の60%のレベルだとすると、あまり運動経験の無い人の場合は、それが50%程度ということも珍しくないのだ。
初心者の場合、まずは物足りないくらいのイージーライディングから始めよう。カラダが慣れたら、最大心拍数の約50%のエアロで心肺能力アップを目指す。このレベルになったら、上りや下りの地形の利用法もマスターしてほしい。
さらなるスタミナアップを目指すなら、インターバルトレーニングを取り入れてみよう。強度、時間は下のリストを参考に。ちなみに、有効なトレーニングの為には、心拍計、サイクルコンピューターなどのツールを利用することが効率的だ。
効率良く走るために、何はともあれポジショニングを設定。
お買い物ツールのママチャリからエクササイズツールとしての自転車に乗り換えたとき、ほとんどの人間は驚くに違いない。
“なんてまあ楽に快適に風をきれるのかしらん。しかも、思ったより疲れないから、長く乗ってても全然へっちゃら!”
一方、ごく一部の人間は、首を傾げるかもしれない。
“疲れるしカラダ痛いしシンドイし。自転車なんて、ちっとも楽しくないじゃんか!”
後者のタイプにならないために、まず知っておいてほしいのがポジショニングだ。ロードバイクにしろMTBにしろ、この基本なくして有効なエクササイズ効果は得られない。
当然のようだが、身長や手足の長さ、体格には個人差がある。一方で、効果的なペダリングには、理想的な膝や足首の関節の角度が必要だ。たとえ体格に個人差はあれ、そのフォームの法則は一方向に集約される。
最も重要なポイントをいくつか挙げてみよう。
体格に合ったサイズのフレームを選ぶ。これはお約束。フォームはサドルにしっかり腰を下ろし、路面からの衝撃を和らげる為に軽く膝を曲げる。体幹部を安定させ、ペダリングをスムーズに行う。
右足でペダルを踏み込んでいる一方で、左足でペダルを引っ張り上げる。左右交互のペダリングがスムーズであればあるほど、運動強度は一定にキープできるし、それだけ長く運動を続けられるのだ。
で、こうしたフォームや動きを実現する重要な条件がポジショニングなのである。
まず、真っ先に決めるべきはサドルの高さ。ペダルが最上の位置にくる上死点、その逆の下死点で、爪先や膝がどの位置にくるのか。美しいペダリングが出来るか否かは、これにかかっている。
長時間のエクササイズに耐えうる大きなフォームを維持するためには、ハンドルの位置も重要。拇趾球と呼ばれる親指の付け根のポッコリ盛り上がった部分を中心軸に合わせることも、踏み込みの力をペダリングに効果的に生かすポイント。
自転車に乗り始めて間もないうちは、ついつい踵が下がってしまったり、肘が突っ張ってしまうことがあるという。正しいフォームを常に意識するためにも、ポジショニングは重要なのだ。
では、ペダルを漕ぎ出す前に、まずはサドルの高さの設定から始めてみようか。
着実に体重を10%減らす、12週間バイク・ダイエット
少しずつ運動強度を上げて、3ヶ月後には体重10%減。バイクを使った確実なプログラムです。
さぁーて。基礎知識は一応押さえた。カッコいい自転車も選んだ。あとは何をすべきか?
むろん、サドルにまたがる。ハンドルを握り、ペダルを漕ぐ。風を切ってグングン前に進むっきゃない。
で、どうせなら漠然と乗るだけじゃなく、エクササイズ効果も狙いたい。カッコよく自転車に乗って、カッコいいカラダになる。引き締まったボディラインとスタミナが手に入れば、もっともっと自転車に乗りたくなるはずだ。
そのためには具体的なプログラムを組んで、エクササイズを実行することをお勧めしたい。車の教習所のように段階を踏んでレベルをあげていくのだ。結果が目に見えやすいので、モチベーションの持続にも役立つはず。期限は3週間を1段階として図進め、約12週間で免許皆伝だ。
まず最初に自分の体力レベルを把握しよう。方法は2つ。4Kmのフラットな道を連続して走る。もしくは5分間フラットな道を走り続ける。その際、サイクルコンピューターで下の表の項目のデータを測定する。あくまで、頑張り過ぎないペースで行うこと。1段階レベルを上げるごとに同じ項目を測定し、スタミナ向上、体重減少の成果を実感すべし。
12週間でダイエット&スタミナアップ。4段階エクササイズ
LEVEL1
運動強度・・・気軽
時間・・・30分
頻度・・・週1~2回
移動手段としてのツールというより、エクササイズのツールとして自転車をとらえる。そんな意識の切り替えと、自転車に乗る楽しさを体感することが、このレベルの目標だ。
とにかく30分間、快適にライディングできる場所を探そう。信号待ちの必要がなく、車や通行人が少ない場所。アップダウンがあまりきつくないことも重要。ついでに景色がよければいうことなし。河川敷や公園内のサイクリングコースがおすすめだ。
この段階ではまだ、ケイデンスを気にする必要はない。とにかく定期的に自転車に乗ることをカラダに覚えてしまえばよし。強度はあくまで、気楽に。気に入った音楽でも聴きながらただひたすら快適に走ってみてほしい。
つい忙しくて自転車にのるチャンスを逸したとき。ああ最近乗ってないなー、と心身ともにウズウズしてきたらしめたもの。生活に自転車が入りこんできた証拠。3週間待たずとも可、である。速やかに第2段階へ駒を進めよう。
LEVEL2
回転数・・・60~70rpm
時間・・・60~90分
頻度・・・週1回~4回
第2レベルでは、30分という時間を物足りなく感じるようになっているはず。というわけで乗る時間を60~90分に延ばしてみよう。
ここからよいケイデンスを指標にエクササイズ。多少の上りや下りがあったとしても、常に一定の運動強度を保つのだ。
筋肉や関節に疲労をためない、最も効率のいい回転数は1分間に90回転と言われている。が、この段階での目標は60~70回転で十分。それでも、初心者には結構シンドく感じるはず。なにせ、ママチャリを普通に漕いでいるときのケイデンスは約40回転前後、と考えれば初めのうちはずいぶんと脚が高速回転しているように思えるだろう。あくまで適度な負荷のギアを設定すること。
運動強度を長時間一定に保つためには、ギアをまめに切り替えることがポイントだ。上り坂にさしかかるときは早めにギアチェンジをして、できるだけ回転数を落とさないようにする。一方、下り坂ではさぼらずにきちんと回転運動を。
LEVEL3
回転数/時間・・・60rpm/10分・80rpm/5分・90rpm/5分・100rpm/5分・110rpm/5分をKEEP
頻度・・・週2回~4.回
さて、いよいよ第3段階へ。ここまでくれば立派な中級者。目標は、スピードと回転力をつけることである。
第2段階にくらべると、大分ケイデンスの変化が複雑になるが、焦ることはない。徐々にカラダをならしていこう。
基本は平坦路。まず、最初の10分間は60回転でライディング。いってみれば、これはウォーミングアップに相当する。ここでサイクルコンピューターの時速を確認しあなたは気付くはずだ。第1段階を同じ回転数なのに、ずっとスピードが速まっていることを。
回転数は以前と変わらない。だが、体力が上がった分ギアを重くしているため、スピードは格段に上がっているのがその理由だ。
その後、5分刻みで80から最高110回転までケイデンスを上げていく。
といっても110回転という数字、それこそいっぱしのレースのレベルに匹敵する。いきなり挑戦するのははっきり言って難しい。
たとえば、80回転に上げた段階で精一杯と感じたら、そのままキープして20分走り続ける。90回転まで達するようになったら、15分間その回転をキープ。100回転なら残り10分間、そのままを維持。
あくまで無理は禁物。ウォームアップ後のライディングを20分間と考えて、体力と相談しながら適度な回転数で走ること。心拍数でいえば160~170程度の運動強度と考えてほしい。
ここまできたら、免許皆伝間近。ゴールはもう一息だ。