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スタミナアップを目指すなら自転車が最高のトレーニングツールになる!

ママチャリでOK!簡単、手間なくスタミナ養成

ひと口にスタミナと言っても、その意味はさまざま。マラソンで35キロ過ぎから求められるスピードも、ボクサーが1ラウンド全力で動くために必要な体力も、どちらもスタミナのひとつである。

トレーニングでスタミナ養成という場合、目的は2つある。第一は一定の負荷の運動で養う持久力、そして第二がインターバルトレーニングで鍛える耐乳酸能力だ。前者は競技時間の長いマラソン、後者は素早い回復能力が必須のボクシングやバスケットボールなどに効果を発揮する。

「スタミナ養成には全身運動、かつ強度が一定で、リズミカルな運動が最適です。ラン、スイム、バイクが3大スタミナトレーニングと言えますが、ランは体重を支えるために関節にかかる負担が大きく、スイムもテクニックに依存する部分が大きい。そこでボクはバイクトレーニングをオススメします」
そう語るのは、スーパーKアスリートラボの北見裕史。競輪の日本選手権を制した山田裕仁や、自転車競技の200メートルフライング日本記録を持つ太刀川麻也を指導するストレングスコーチだ。

「バイクはサドルに座っているので関節にかかる負担が小さい。さらにギヤ比を調節できるので、強度ゼロの運動を作り出せます。逆に強い運動強度を作り出すことも可能でしかも長時間連続して行えます」
同じ自転車選手でも鍛え方次第で体型が異なるのは、マッチョな競輪選手とスレンダーなロードレースの選手の体型を想像すればいい。大切なのは目的に合った自転車の乗り方をすること。

使用する自転車は、スポーツバイクならベストだが、ギヤ付きならタウンサイクルでも十分にスタミナ養成が可能。フィールドを選ばず、多様な競技に対応できる・・・・・・これがサイクルトレーニングの最大の魅力だ。

サドルのポジションを調整しトレーニング効果を変化させる

自転車の乗り方なんて今さら教わらなくても・・・・・・そう考えている人は多いだろう。しかし、断言してもいい。アナタのポジションは間違っている。トレーニングを目的に自転車に乗る際は、強化したい部位によってサドルの高さの調整も異なるのだ。
「サドルに跨って、ペダルを一番遠いところにセットします。このとき踵がペダルにちょうど触れる程度にサドルの高さを調整してください。自転車競技の選手は、もっと高い位置でサドルをセットしますが、クロストレーニングとして考える場合は、この高さが基準です。」
この基準よりもサドルを高くすればハムストリングスや大殿筋に作用し、低くすれば大腿四頭筋や前剄骨筋のトレーニングになる。自転車選手は1ミリ単位で調整をしているので、かなり変則的なポジショニングだが、北見理論では高さを調整するときは2センチ単位でサドルを上げたり、下げたりすればいい。
高さが決まったら、ペダリングをしやすくするためにサドルの前後位置も調整しよう。
ペダルを時計の3時の位置にし、ヒザの皿の裏から垂らした垂線が、足の親指の付け根にある骨(母指球)と重なるようにする。この基準よりもサドルを前進させれば脚を回転させやすく、後退させると回転は落ちるが、重いギヤ比でもペダリングしやすくなる。
サドルの調整は簡単に行えるが、方法が分からないときは自転車店で聞いてみよう。

ペダルは三角形にスムーズに回す!

漕ぐ、踏む、回す? ペダルにまつわる動作は、人によって大きく感覚が異なる。そう、意識次第でペダルから発生する駆動力は大きく変わる。北見曰く、
「ペダルは感覚的には三角形に回します。実際にはペダルの軌跡は弧を描きますが、ペダリングをプッシュダウン(踏み降ろし)、キックバック(蹴りだし)、そしてプルアップ(引き上げ)の3つの動作と考えます。この動作を意識することで、ペダリングはグッと滑らかでスムーズになります」

通常、ママチャリではペダルを踏み降ろすことのみで駆動力を発生させている。だが、自転車選手はペダルと足を固定して、より効果的な駆動力を得ている。ただし、構造上、ペダルが一番上に来る「上死点」と、逆の「下死点」では駆動力を得られない。そこで大切なのが“意識”なのだ。

「2時の位置から踏み降ろし、5時から後ろに向かってペダルを蹴り出す。そして、11時から前向かって引き上げる」

このとき、重要になってくるのが踵の位置。初心者は足首を使ってペダルの回転力を向上させようとするが、かえって無駄な動きにつながる場合が多い。そこで踵の位置が下がらないように、できるだけ固定する感覚を持つこと。
また、自転車をトレーニングで使う際には回転数も忘れてはならない。
「リハビリでバイクを使うときは一分間に50〜60回転ですが、ロードレースでは一分間に90〜120回転、トラックレースでは200回転を超えます。競技特性によって最適なペダリングの回転数は変わりますが、トレーニングでは95±5回転が目安です」
慣れてくれば、自然とペダリングのリズムが取れるが、最初はサイクルコンピュータを使って感覚をつかむこと。まずは『ペダルは踏まずに回すモノ』だと意識し、回転数を上げるようにすれば、関節の負担も小さくなる。

マルチスポーツ対応のトレーニングギア

バイクのセットアップが分かったところで、もう一度バイクトレーニングの魅力を確認しておこう。全身運動で、リズミカルに長時間にわたる運動が行いやすく、エアロビクスなので持久力が向上する。さらに、フィールドを選ばず、多段ギヤを組み合わせて運動強度を自由に設定できる。この2点だ。
「たとえば2人で並んで走っていても、1人はギヤ比を重くして筋力アップを、もう一人はギヤ比を軽くして心拍系トレーニングができる。要するに同じコースを走りながら、ターゲットを変えてトレーニングができるわけです。ほかのトレーニングではなかなかこんなことはできません」
スケートの清水宏保を筆頭に、ウィンタースポーツの選手がオフシーズンに自転車を利用しているのは、この2つのメリットを生かしているからだ。では、どうやって応用したらいいのだろうか?

「競技ごとのトレーニングをメインに、週に1〜2回の補助メニューとして活用すればいいでしょう。持久系スポーツであればATレベル(最大心拍数の60パーセント)で長時間。耐乳酸能力の向上を図るなら、インターバルトレーニングを取り入れてください」
インターバルトレーニングで往復するのがキツければ、復路は心肺機能の向上を狙ったエアロビックトレーニングに切り替えることもできる。心肺機能の向上は、どの競技でも求められる体力だから、自転車に乗っているだけでプレーにおけるスタミナもグングン向上するはずだ。