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ロードバイクに乗ってスリムになる【ロードバイクマガジン vol.1掲載】

 人間は太古の昔より不老不死を追い求めてきた。そのことは21世紀になった今現在も変わらない。無農薬栽培の健康食品や高価な基礎化粧品が飛ぶように売れているのがその証拠だ。そんなものに頼らなくても普段から体の状態に気を付けていれば美しく、健康な体を維持できるはずだ。
 しかし、毎日のように朝早くから満員電車にゆられ、ろくな食事もとらないまま夜遅くまで仕事をこなし、家に帰れば疲れ切ってしまい、休日はゴロゴロするだけでは、健康に気を使うどころか、スポーツをする暇もない。ましてや肉体的にも精神的にもストレスが溜まるので、いつ体調を崩してもおかしくない。
 また、このような状況では、病気にならずとも体型に変化が出る場合が多い。不規則な生活やストレス、偏った食生活などが原因になり、人によっては痩せ、また人によっては太るのである。
 そこで今回、このような社会的要因によって太らされた(?)私、竹花寿実は一念発起し、ロードバイクを使用したダイエットに挑戦してみることにした。
 とりあえず、これから1年間挑戦することにしたのだが、実際、ダイエットするだけなら、仕事を休み、集中的に運動すれば可能なのはあたりまえ。非現実的なプログラムでやっても仕方がない。そこで、今まで通り仕事を続けながらできる方法を考えてみた。
 つまりこういうことだ。自宅で仕事をする自営業の人は別にして、社会の大多数である一般的なサラリーマンであれば、少なくとも通勤という移動時間がある。その移動を、ある程度ロードバイクに置き換えれば、毎日の生活に支障をきたすことなく、定期的に運動することが可能だ。私の場合も、自宅と某自動車雑誌編集部間の移動をロードバイクで行うことにしたのである。
 そこで問題になるのが、そのときの乗り方である。ただがむしゃらにロードバイクで通勤しても効果がなければ意味がない。そこで、プロのトレーナーにアドバイスを受けながら行うことにした。この点は少々非現実的だが、みなさんの参考になるよう判りやすく説明していくつもりだ。

まず自分の体と体力を正しく知ることが大切!

 エアロバイクで段階的に負荷をかけ、今現在の体力の限界、つまり最大酸素摂取量を測定する。この結果からダイエットに効果的な運動レベル導き出し、どのようにバイクに乗ればよいかを判断する。
 次に「体組成」、つまり筋肉や脂肪、水分のバランスを計測する。計測には「InBody」という特殊な装置を使用した。結果は以下の通り。

1、体成分分析

細胞内液量、細胞外液量、タンパク質量、骨量、体脂肪量の情報が示されている。健康な人の場合、体重の50~60%が水分だが、私の場合体脂肪が多いため50%を割り込んでいる。水分は細胞の内外で2:1の割合となり、それぞれ29.4Lと14.7L。タンパク質量は、筋肉細胞の構成成分で被験者の栄養状態や身体発育などに関係する。つまり筋肉量に比例する数値で私は16.1kg。骨量は、乾いた状態での骨の重さ。これは意外と軽くて3.35㎏。体脂肪はその名の通り脂肪の量だが、まさか29.8㎏のあるとは思ってもいなかった。太っているわけだ。

2、筋肉、脂肪診断

身長、体重、筋肉量、体脂肪量、体脂肪率、腹部脂肪率が、棒グラフと数値で示され、項目によっては標準値に対しておよそ何%か確認することができる。身長は175cmで平均値に対して約103%。体重は93.4kg(実際は衣服の重さを引いて92.5kg)で140%弱。これは相当重い。筋肉量は60.2kgで平均値の110%以上。重い体を維持しているのだから当然のように人並み以上の筋肉がある。体脂肪量は、皮下脂肪、内臓脂肪、筋肉内脂肪の合計で、上記のとおり29.8kgで標準値の220%強!。もう何も言うことはない。体脂肪率は31.9%と驚異的な数値。男性の場合10~20%、女性は18~28%が標準的な範囲。腹部脂肪率はウエストとヒップの比率で、内臓脂肪の過多を判断できる。男性は0.75~0.85、女性は0.70~0.80が標準範囲だが、私は0.95.成人病の可能性がかなり高くなる数値が出るほど内臓にも脂肪がついているようだ。

3、体液

四肢および体幹の水分量を示す。基本的には筋肉の発達程度によって水分量も変化するので、体全体のバランスを見ることができる。骨折や捻挫、関節炎などがある人は不均衡が表れる。わたしの場合は珍しいくらいバランスがとれているそうだ。つまり、全身くまなく太っているということ。

4、浮腫率

組織内の水分量を示す。値が0.35以上だと水分過多だが、私は0.334。

5、総合評価

筋肉タイプ、栄養状態、上半身下半身バランスを評価した結果が示されている。私の場合、筋肉質でない肥満で栄養状態は良好。上下半身の発達は標準的で左右半身も均衡がとれているという結果が出た。日本人の場合、標準体重以下でありながら筋肉量も少ない「やせの肥満」が多いという。

6、体重調節

さまざまなデータから算出された適正体重が示される。私の場合は脂肪だけを現在から18.6kg減らして体重を74.8kgにするのがベストだと出た。しかし、トレーニングを行うと筋肉量に変化が起きるので、適正体重はそのつど変化する。

7、フィットネススコア

体組成を点数化したもの。筋肉量が不足するか、体脂肪量が多くなるほど点数が下がる。一般的には75~85点が普通で私は79点。脂肪は多いが筋肉も多いのでこの点数になった。

8、栄養学情報

肥満度、BMI(体重/身長)、基礎代謝量、上腕筋肉周囲長、上腕周囲長、体細胞量が表示される。トレーニングの指標に利用する。
一般の人がテストするには・・・

 多くの人は、テレビや雑誌から情報を得て、ダイエットを始める。それらで紹介されているダイエット法には、やや難有りのものもあれば、医学的に問題ないものもある。だから、選択したダイエット法さえ正しいものならば、そういったメディアから得た情報に基づいてダイエットを始めること自体に問題はない。
 しかし、そこには大事なことが抜け落ちていることにほとんどの人は気がついていない。
 それは、「そのダイエット方法が自分に合っているか」だ。
 人はそれぞれ身長、体重が異なるだけではなく、筋肉量、筋肉の質、体脂肪量、脂肪が多い部位、上半身・下半身のバランスなどさまざま。さらにいえば、平常心拍数や酸素摂取量、基礎代謝量なども異なる。
 本来なら、これら個人の体のデータを正確に把握し、それに合わせてダイエットプログラムを作らなければならないのだ。最近流行の「低インシュリンダイエット」や「ダンベルダイエット」もこの点については同じなのである。
 今回のバイクダイエットでも、この点をおざなりにしては、逆に体をこわしたりしかねない。だからみなさんも、この記事を参考にする場合は、必ず自分の体と体力をチェックすることを忘れないで欲しい。
 最低限必要なデータは、最大酸素摂取量と体脂肪率。体脂肪率は市販の体脂肪計を使用して計測しても良いが、今回行った体組成テストも、できるところさえ見つけてしまえばリーズナブルな料金で可能なので、試してみることをお勧めする。
 最大酸素摂取量は、専門知識を持ったトレーナーがいないと、計測するのはなかなか難しいので、市販の心拍計を購入し、ジムなどでスタッフに手伝ってもらい、最大心拍数だけでも計測してもらいたい。そうすれば、最大酸素摂取量が判らなくても「カルボーネン法」と呼ばれる計算式で、適正なトレーニング強度を算出することができる。
 カルボーネン法の計算式は、
{(最大心拍数‐安静時心拍数)×60%}+安静時心拍数=トレーニング時の心拍数

ついにダイエットプログラム完成!

 北見トレーナーに計測してもらった、私の最大心拍数は191/min。これと私の体重92.5kgというデータを元に、いよいよダイエットプログラムが完成した。それは「週に1回以上、心拍数141~161/minに間を維持しながら、休憩なしに連続30分以上ロードバイクに乗る」というものだ。
 プログラムがこうなったのは以下の通り。
 まず、右の表にあるように最大心拍数から「3.85L/min」という最大酸素摂取量を導き出す。これの58%に相当する運動強度のことを「AT(anaerobic threshold、無酸素性作業閾値)」というのだが、私のATレベルは、3.85L/minの58%である「2.23L/min」。各負荷レベルにおける私自身の心拍数の平均値にこれをあてはめると、心拍数が「151/min」となる。±10は許容範囲だ。 ATレベルとは、「有酸素的に行える最も強い運動強度」のことをいう。いいかえれば、「体脂肪を消費しながら筋肉痛にもならない運動強度」ということだ。つまりATレベルの運動を続ければ、筋肉量を増減させずに脂肪だけを燃焼することができるのである。
 このATレベルの運動を30分以上連続で行う理由は、ある程度連続して有酸素運動を行わないと、血中の糖分だけしか消費せず、脂肪を燃焼することができないから。「週1回以上」というのは3回でも4回でも良いのだが、毎日やっても効果が出にくいからだ。
 「カルボーネン法」でも、心拍数としてATレベルは算出できる。が、人によっては天と地ほどの違いが出る場合もあるので、体力に自信がなかったり、動悸や息切れが激しい人には、今回のような方法を薦める。
 ちなみに私の「体重1㎏あたりの」最大酸素摂取量は、3.85L/minを92.5kgで割った数字「41.62ml/kg/min」となる。これは20歳代の男性としては「やや低い」と判断される。つまり、有酸素能力=体力がやや低いということになる。ダイエットに成功すれば、この数値はもちろん向上するのだ。科学の力を信じてバイクダイエット開始だ。

一年後、ボクはスリムなボディを手に入れることができるだろうか‥

 というわけでダイエットプログラムも完成し、いよいよバイクに乗り始めたわけだが、私の場合、まずロードバイクに慣れることからはじめなければならないので、当面は近所のサイクリングコースで、暇な時間を見つけて乗ることになるだろう。
 仕事での移動をバイクでできるようになれば、1日に40kmは走ることができるので、それを週に1回以上行えばノルマはクリアできる。みなさんがこのページを参考にする場合は、通勤電車に乗る駅を2~3駅先にするだけでオーケーだ。
 北見トレーナーからは「最初は心拍数を141/minを目安に始めた方が良いだろうね。注意する点は坂道でもダッシュしないこと。負荷はギヤを平地で前後真ん中にした重さで常に走ること」とアドバイスを受けた。これも、いままで長らく運動らしい運動をしていなかった私でも大丈夫そうだ。
 少し試しにバイクに乗ってみた感じでは、前後のギヤを真ん中に合わせて、ATレベル、つまり心拍数141~161/minの運動は特につらいとは思わなかった。これなら長く続けられるだろうし、どんな人にもお勧めできる。
 さらに感動したのは、ロードバイクの快適さだ。10年以上前に乗っていた当時の私の自転車とは比べようもないほど快適なのである。この本を読んでいる人は、当然、すでにロードバイクに乗っているだろうから、「何を今さら」と思われるだろうが、ロードバイク初心者の私にとっては衝撃だった。もし、まだ現代のロードバイクに乗ったことがない人は、ダイエットのためとはいわずとも、乗ってみることを薦めたい。
 さて、今回の目標だが、現在92.5kgの体重を1年後に80kg以下まで落とすことに設定した。体組成測定器「InBody」の計算では74.8kgが適正体重と出ていたが、北見トレーナーの話によると、長い期間をかけて太ってしまった私のような場合、短期間に集中的に痩せても、その後のリバウンドが起きやすいそうだ。逆に、1年後以降も続けるつもりでじっくり痩せた方がその後も太りにくくなるという。短期間に目に見えて結果が出ることは確かにやる気につながるだろうが、せっかくだから後者を選んだわけだ。
 まだ今回は紹介しなかったが、血液検査や骨密度の検査も行った。じつはこれらはかなり悪い結果が出たのだが、これらのデータは次回以降、身体の変化が現れた段階で紹介する予定だ。果たしてどんな結果が出るのだろうか。私自身、今から楽しみである。
 さらには食事についても次回以降のテーマとしてとりあげたいと考えている。運動と食事の関係は、ダイエットをするにあたって切っても切り離せないもの。効果的な食事はどんなものなのだろうか。
 もちろん、血液検査や食事制限は手間もかかるし、誰にでもできるものではない。特に食事制限は外食が多いサラリーマンにとっては不可能に近い。私自身も正直不可能だ。だから極力“実用的な”食事制限を紹介したいと思っている。
 さて、実際に1年後、私はスリムなボディを手に入れることができるのだろうか・・・。まだ、何の結果も出ていない段階でこんなことをいうのは、アドバイスしてくれる北見トレーナーに失礼だが、現段階では正直いって不安だ。しかし、1度決心した以上、目標に向かって走り出した以上、健康で美しい体を取り戻すために、不肖竹花、日々精進する所存であります。