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<読むトレーニングジム>トレーニングの効果を最大限引き出す運動中の水分補給について考える【サイクルスポーツ2002年8月号】

水分ってなんだ?

トレーニング中は「水をとるな!」ということを耳にしたことがあると思うが、どう考えるだろう。おそらく、この言葉の意味は、循環器機能によけいな負担をかけて効率を悪くする、または、集中がとぎれてトレーニングで追い込めなくなるということだったのだろう。しかも、長い間、トップアスリートはトレーニング中に水を飲まないと選手のみならず、コーチ、監督も信じられていた。

しかし、現在はロードレースでボトルをつけていない選手はいないし、サッカー選手も展開が途切れるごとに水分を摂る。マラソンでは補給は戻ってでも摂るという選手もいるくらいだ。各スポーツ界で水分へのこだわりがでてきたからである。今回は、その「水」に注目してみよう!

「身体の60%は水分である!」という表現にピンとくるだろうか?その水分量の3分の2は細胞内に、3分の1は細胞空間にあり、体内の化学反応の溶媒として働き、正常な細胞活動をするために存在している。

ヒトは1日に約2.5リットルの水分を排泄する。トレーニングをしているときは、さらにその5〜6倍の水分が排出されるといわれ、水分補給が間に合わなければ血液の粘度が高くなる、体温が上昇する、脱水症状や腎臓に負担をかけるという症状が起こることもある。

私自身も自転車でのハードトレーニングのあとに脱水から急性腎不全になって緊急入院させられた経験がある。水分にこだわらなければいけない理由を身をもって実感した。

 

何故「水」なのか?

水分は胃で吸収されずに、そのほとんどが腸で吸収される。トレーニング中はできるだけ速く胃を通過して腸に水分を送らなければならない。そのためにはトレーニング強度に対して、飲料の量と温度、含まれている糖質や、電解質などで決まる浸透圧が影響するので、水分を取るタイミングや量、含有物を考えなければならない。

飲料中に含まれる糖質濃度が高いほど胃に滞留して腸での吸収が遅くなる。また、飲料の濃度が高すぎると浸透圧が高くなり体液が飲料を薄めようと反応して水分吸収の効率を低くする。だから飲料の濃度を体液より低くし、浸透圧を下げて腸から水分を吸収しやすくしなければならない。

日本のトップロード選手達はスポーツドリンクを水で薄めたものをボトルに入れてトレーニングしている。糖質濃度は6〜8%ぐらいが目安だ。

 

トレーニングに必要な水分の量は?

通常の気候でも1日に3〜4リットルの水分は必要で、夏の暑い日では6リットル以上の水分が要求される。そんなに水分を取ったら胃がはってしまったり、腹痛を起こしたり、体重が増えてしまうこともあるかもしれない。ただ、2ヶ月ほどで体が適応してくる。その慣れたあとからトレーニング効率がぐっとアップするのだ。ツールドフランスの選手は1日平均6.7リットル摂取しているというデータがあり、選手によっては毎日9リットル近く取るという。ツールばりにトレーニングしている選手は、意識してより多くの水分を取ろう!

 

具知的にどう水分を取ればよいのか?

ロードトレーニングに行くときは、ボトルを2本用意し、5〜10度程度の冷えた水でスポーツドリンクの薄めたものを入れて、15〜20分ごとに150〜200mlずつこまめに飲む。のどが渇いてから飲むのでは間に合わないので意識して飲もう。

2時間以上のトレーニングになりそうならもっとボトルを用意すること。ウエイトトレーニングや短距離のトレーニングでは、きちんと食事を取り、トレーニング中はインターバルのたびに100〜150mlずつこまめに「水」を飲む。目安は1時間に500mlのペースだ。トレーニング中の体重は1Kg減以内にすること。体重が減って喜んでいてはダメ。

どのトレーニングでも1日に4リットルの水分を摂ることは、とても大変なことだが、とりあえず、毎日2リットルの水分を取ることから始めてみよう!

せっかくトレーングするのだから、体調を崩さず効果を最大限引き出せるように暑さを乗り切って頑張ってほしい。