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<読むトレーニングジム>自転車に必要なのは下半身の力だけではない 上半身も鍛えて体の筋バランスを保つ【サイクルスポーツ2002年11月号】

自転車は太もも運動ではなく全身運動だ

どんなスポーツしてる?と聞かれて、「自転車競技」と答えると、「それじゃ脚太いでしょ」と言われる。サイクリストならだれしも経験があることだろう。自転車はペダルを踏んで進むのだから、当然脚の力は必要である。けれども脚の力だけではさほど進まない。

たとえば、ウォーキング、ジョギングしている人に対して、「脚太いでしょ」という質問はあまり出てこない。脚の裏で地面を蹴って進むのだが、強度は自重分を超えることは少なく、持久的能力を要求されるので細く引き締まった筋肉が作られる。

また、その脚を振り出したときに起こる腰の回転は、手を大きく振ることで干渉させ、体幹をしっかり固定させなければならない。それでも振り下ろし、けって、引き上げる、という脚の動作にはそれぞれの部位の筋肉が働く。

つまり、ウォーキング、ジョギングをしている人は、全身の筋肉をバランスよく鍛える必要がある。

自転車でも同じことが言える。ペダルを踏み込むと、腰は回転するが、それをサドルに座ることで回転を止めている。それでも腰に回転がかかってしまうほど強度が大きなときは、腕でハンドルをしっかり握って上半身を固定させる必要がある。

それができれば、脚でペダルを踏む力の限界を超えて、腕、肩、広背の筋力も動員し、体重の2~3倍もの強い力が発揮できる。上半身の力をペダルに伝えることや、体幹をしっかり固定させることで、強度の高い力をも生み出すことができるのだ。脚が太ければ有利かもしれないが、自転車は全身の力をバランスよく発揮することで、想像以上のパワーを発揮できる。

学生時代に体カテストで、背筋力の測定をしたことがあると思うが、そのときの数値は体重をはるかに超えていたことだろう。同じように、レッグプレス、スクワットもトレーニングをするにつれて体重以上の重さを持ち上げることができるようになる。その力が自転車に乗って生かせることが、競技パフォーマンスを向上させる1つになる。

自転車に乗って力を出すことは、陸上競技の動きと違って、フリーの状態(地面に足がついていない状態)で力を発揮するために、筋バランスが非常に重要だ。ペダルを踏むのも片脚ずつであり、ハンドルを引く力も背・腰が固定されていないので、力を発揮させている間は、つねに動いてしまう不安定な状態になっている。

すべてを一度にコントロールするのは難しいので、焦点を決めてトレーニングしていこう。ベンチプレス、ラットプルダウン、スクワット。どの種目もバランスがとれていればシャフトは地面に水平に上下し、バランスが悪ければ左右に傾いてしまう。主働筋と四肢に対して均等に力がかかっているかの確認をしよう。

バランスよく筋力を鍛えるためには、きつくなってきてからの数回が重要なので正確に試そう。スプリンターは、体重の3分の2の重さで10レップ3セット。ロードマンは、体重の3分の1の重さで30レップ2セットを基本にして始めよう。

参考までに、体幹の筋バランスは大胸筋と広背筋が1対1、大腿四頭筋とハムストリングスの筋パランスが3対2になるようにトレーニングメニューを考えてみよう。この設定はあくまで初心者に対する大まかなもので、慣れてきたらピリオダイゼーション(レースなどの目標までの期間をいくつかに分けて、段階的にトレーニングを重ねていく方法。本誌027月号・107ぺージを参照)を考えて続けよう。