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<キーワードで知る強化法 第2回>パワー:中程度の負荷で最大の力を発揮するパワートレーニングが効果的【サイクルスポーツ 2003年5月号掲載】

「パワー」とは何か

今まで以上によく聞き、何げなく使っていた言葉や、試していたことをもう一度考え、確認してみるこの連載。今月のキーワードは「パワー」。

 

大きな石を動かす大男や、大量の仕事をてきぱきこなしつつ余裕を見せるビジネスマンを見て「パワーがあるな」言ったりすることがある。この場合の「パワー」とは、純粋な体力要素を指しているだけではなく、「力強い」「精神的タフさ」を含めて使っている。

しかし、トレーニングのときに使う「パワー」は、もっと言葉の意味が限定され、「筋力」「全身持久力」「平衡性」「敏捷性」「巧緻性」「柔軟性」というものと同等に、体力要素の1つと考える。筋収縮によって、ある重さをどのくらい移動させ、その動作に要した時間で割ったもの「(重さ×動いた距離)/時間」で表される。

ウエイトトレーニングで、最大筋力(1回で持ち上がる最大の重さ)の測定をしたとしよう。おそらく、うめき声を上げながら、顔をmッ化にさせて、上がるかどうか挑戦していることであろう。

そこで発揮された力はラグビーでスクラムを組んだときのように、外見の動きからは想像できないほどの大きな力が発揮されている。この状態であれば、最大筋力測定の評価に対してパフォーマンスが高く現れる。

しかし、陸上の100m走や自転車のように加速が伴い、高速で筋収縮が行なわれるスポーツでは、その動作に要した時間が大きく関係してくる。この筋力トレーニングをするときには、意思的に速く動かすことで「パワー」をつけることを考えていく。

少し分かりにくいが、筋力は、「重さに対して発揮する能力」で、パワーは、「発揮された力と速度の積」と考えよう。例として、最大筋力90%で発揮したときのパワーは、最大筋力100%で発揮したときのパワーの2倍に発達するといわれている。パワーは常にスピードと関係するのだ。

パワートレーニングでは、最大筋力のような1回で持ち上がる限界の重さを速く持ち上げることはできない。だからといって、1~2kgの重さを思いっきり速く動かしたら、抜けた感じがして力を出し切ることが出来ない。そこで、多関節の種目で、中程度の負荷を使って爆発的な力を発揮するようにこころがけてトレーニングする。

具体的方法は、ベンチプレス、スクワット、パワークリーンなどの種目を、最大筋力の75%(10回持ち上がる重さ)の負荷で3~5レップ、2セット行なう。 

注意点は、トレーニングで疲労していない状態で、できるだけ意識的に速い動作で実施すること。けっして限界まで追い込むのではなく、余力を残すこと。このときに養われた力が「パワー」となって生かされていく。

パワーの効果を確認する方法は、垂直飛びや立ち幅飛びで、最初より何cm遠くに飛べるようになったかで評価。もしくはマグターボやローラー台を使って、同じギヤと負荷で10秒間ダッシュしたときに、最高ケイデンス(ペダルの回転数)と最高速度(km/h)がどのくらい増やしたかで評価しよう。どちらも10%アップが目標だ。

最近は、野球、サッカー、水泳などでもパワートレーニングを取り入れるようになった。

自転車競技のナショナルチームもシドニーオリンピックの前からウエイトリフティングの専門コーチを医科学チームに導入。スナッチ、パワークリーンの基本動作から指導してパワートレーニングを取り入れている。また、固定エルゴメターにSRM*1を取り付けて実走に近い10秒および30秒ダッシュでパワー測定をして参考デーダにしている。

 

キミも来年のアテネオリンピックをねらうなら、今からパワーにこだわったトレーニングを取り入れて、夢を実現しよう!