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ホーム > 雑誌掲載情報 > <キーワードで知る強化法 第4回>最大酸素摂取量:4つの方法で摂取量をアップし持久力を効率よく高めよう【サイクルスポーツ 2003年7月号掲載】

<キーワードで知る強化法 第4回>最大酸素摂取量:4つの方法で摂取量をアップし持久力を効率よく高めよう【サイクルスポーツ 2003年7月号掲載】

有酸素運動とは、簡単に説明すると「酸素を吸って二酸化炭素を吐く」とも言える。そのとき、最大どのくらい酸素摂取ができるのかが最大酸素摂取量であり、持久力の指標となる。今回はこの「最大酸素摂取量V・O2max」をキーワードに考えよう。

 

 大気中には20.93%の酸素と0.03%の二酸化炭素が存在する。呼吸したときに、酸素だけを選んで吸うことはできないので、酸素、二酸化炭素を含む「空気」を吸って「空気」を吐く。しかし吸った酸素を全部吸収することはできず、吐いた息にも酸素は残る。すなわち、吸った酸素の量から吐いた酸素の量を引いたものが摂取量になる。それに、心臓の1回の鼓動で送り出す血流と心拍数を掛け合わせたものが酸素摂取量だ。「最大酸素摂取量=1回拍出量×心拍数×(動脈血酸素含有量-静脈血酸素含有量)」で表される。

 つまり、最大酸素摂取量を大きくするためには、1.1回拍出量を増やす 2.心拍数を多くする 3.動脈血酸素含有量を多くする 4.静脈血酸素含有量を少なくする などを考えれば効果が上がる。

 最大酸素摂取量の測定方法は、安静の状態からトレッドミルまたはエルゴメーター(固定式自転車)を用いて徐々に負荷をかけていく。少しずつ増えていく酸素摂取量をガスマスク呼気の酸素から計算して摂取量を求める。やがて、酸素摂取量の上昇が止まり、運動の限界がきたら、トレッドミルならばロープで体を吊り上げ、エルゴメーターならペダルを止めて測定終了。この検査で得られた1分あたりの最大の酸素摂取量が「最大酸素摂取量V・O2max」となる。

 しかし、この測定は、限界まで負荷をかけていくことから危険を伴い、医師立会いのもと救急体制ができている状態で実施する。また、呼気の酸素量を計測できる高精度の機材を用いるために、なかなか測定する場と機会が少ない。

 簡易的な推定最大酸素摂取量の測定方法は、エルゴメーターを用いて、ペダルにかかる負荷と心拍数の関係を計算で求めることができる。ただし、この方法はあくまでも最大心拍数が「220-年齢」であることと、仕事量50Wあたり0.6Lの水分を摂取するという前提がある。また、心拍数は疲労状態や精神状態で変化し、最大心拍数も実際計測すると20拍前後の誤差があるので、正確であるとは言い難い。

 しかし、持久力の指標を持たない人は、参考に知っておいたほうがいいであろう。もちろんスペシャリストを目指すなら実測で最大酸素摂取量を測定しておこう。

 最大値で運動を続けることは生理的に不可能なので、有酸素から無酸素への変化地点(AT・無酸素性作業閾値)や無酸素の状態でたまり出す乳酸の量が急激に増え出す地点(OBLA)の強度でトレーニングをして持久力を伸ばすことも考えられている。

 最大酸素摂取量を高める方法としては、①1回拍出量を増やすために、90分以上余力をもって持続できる強度の心拍数を見つける。効果が出てきたら強度を上げるのではなく運動時間を延ばしていく ②心拍数を高く上げるために、100拍前後の心拍数で20~40秒のダッシュ、休息90秒10セットのインターバルトレーニングを行い、最高心拍数が上がるようにする ③動脈血酸素含有量を多くするために、肺機能を高めることを考え、換気能力、拡散能力、換気血流比に問題がないかを確認し、高地トレーニングなどでヘモグロビン量を増やすことを考える。喫煙は酸素とヘモグロビンの結合を妨げ酸素含有量を低下させるので控える ④静脈血酸素含有量を少なくするために、酸素が筋の中で血液から組織へ拡散していく速さ、毛細血管の発達、血流の配分、筋細胞の酸素利用効率を良くする、などが考えられる。

 

 トレーニングの効果を知るためには客観的な指標が必要である。そのために最大酸素摂取量の変化を指標にし、効率よくトレーニングをする。その指標の特徴や長所・短所を知った上で上手く利用していこう。