【雑誌掲載情報】Update Information
<キーワードで知る強化法 第1回> ウォームアップ:筋肉の温度を高めて運動機能を十分に発揮させよう【サイクルスポーツ 2003年4月号掲載】
今月から始まる「キーワードで知る強化法」。今まで、何となくやってきたトレーニング。その意味を、毎月1つのキーワードを挙げ、言葉という切り口からもう一度考え直し、確認していこう。
今回選んだキーワードはウォームアップ。
スポーツ観戦、たとえばサッカーの試合中に「~選手がグラウンドでウォームアップを始めました」と解説が入る。野球の試合中でも「~選手がブルペンでピッチングのウォームアップを始めました」というアナウンスをよく聞く。
自転車競技のスタート前でも、体操をしている人やストレッチをしている人、思いっきりダッシュしている人など、思い思いにウォームアップをしているのを見かける。彼らは、スタート前になぜそのようなことをしているのか?
「ウォームアップ」とは、体温の上昇により有酸素性代謝活動を盛んにして、体内の酸素の活性効率を高める。また、体温を上げていくことで、筋、関節、腱、神経系を含めたカラダの諸機能を安静の状態から運動に適した状態に徐々に導入していくための準備運動である。
ウォームアップをすることであらかじめカラダの運動レベルを高めておくことは、ヘモグロビンが組織内で酸素を供給しやすくし、酸素運搬の効率を高める。筋、関節、神経系を刺激することにより関節可動域を広げ、障害を予防し、パフォーマンスを向上させることにつなげる。
筋や腱の温度が低いと、急に強い収縮をしたときに筋の部分断裂、いわゆる肉離れや腱断裂などの外傷を起こす可能性がある。体温を高めておくとその危険性が低下する。筋温が低いと筋が協応性にかけて調整のとれた円滑な動作が困難になる。
ウォーミングアップは筋温を高め、動作を円滑にするのに役立つ。そして運動機能を十分に発揮し、良い記録を出すのに大きな役割を担うことになる。
具体的方法として、スタート召集の1時間から30分前にウォームアップを始める。最初は低負荷で回転を意識し、徐々に心拍数が上がっていくような運動動作を作る。
衣服も1枚から2枚多めに着て体温を上げることを考える。このときは発汗が目的ではなく、体温を上げることが目的なので、水分を十分に取ってから行うこと。
温まったところで、関節可動域を広げるためストレッチをする。春先の寒い日やカラダが冷えてきそうなときは、スタティックストレッチ*1よりもダイナミックストレッチ*2やPNFストレッチ*3を取り入れよう。体温を高めていくことを優先するためだ。
次にローラー台などを使って心肺機能と神経系のウォームアップをする。長距離の大会ならレースで上がる心拍数まで徐々に上げる。このとき30分間こげるところを15分間でやめて、疲労が出る手前でやめておくこと。そのときの物足りなさはレースで発散すればいい。
短距離の大会ならば、10秒以内でトップスピードに乗せることができるよう、2~3本ダッシュをする。トップスピードに乗せるまでの感覚をつかんでおくことが重要だ。どちらもウォームアップの終了時は、心拍数100拍くらいまで落として、2~3分ウォームダウンしてから小休止して、スタートラインへ行くこと。
トレーニングを積んだ選手ならアップは長めに行うことができ、その日の体調をウォームアップでコントロールすることができるだろう。
練習不足の人は怪我をせず、披露しない強度にとどめてカラダが温まるようにウォームアップをしよう。
筋肉が温まりにくいときや、冷えてしまいそうなときは、あらかじめ温まるクリームや皮膜を作るクリームを脚、腰に塗りこんでおくことも手だ。
ウォームアップを意識的に行なってレースで実力を発揮しよう。
*1:静止した状態で行なうストレッチ
*2:運動時の神経系のアップを考慮したストレッチ
*3:力を入れたあとにリラックス時に補助を入れながら行なうストレッチ