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<キーワードで知る強化法 第5回>体脂肪:体脂肪とは何か?その役割を知ったうえで上手にコントロールしながらトレーニングしよう【サイクルスポーツ 2003年8月号掲載】

食物の摂取カロリーと基礎代謝や日常動作、トレーニングなどによる消費カロリーのバランスが崩れ、プラスになった場合、余ったカロリーが脂肪として皮下などに蓄積される。これを体脂肪と呼ぶ。今回はこの「体脂肪」について考えていこう。

 

 以前は、肥満の評価方法として、標準体重が使われた。これは<(身長-100)×0.9>で求めた値を標準体重とし、さらに<(その人の体重-標準体重)÷標準体重×100>で求めた値を肥満度とした。最近は体格指数(BMI)を用いて<体重(㎏)÷身長(m)>の2乗の値が22±2以内を標準としている。

 しかし、これには運動をしない一般の人にはあてはまるが、一見太って見える重量挙げの選手や極端に細身のマラソン選手では肥満の判定にならない。そこで、運動選手が身体バランスを評価するときは、体脂肪率を指標にする方法がベターだろうと考えられている。

 体脂肪率は、体重のなかで脂肪のしめる割合(%)のこと。成長期を過ぎた成人であれば、体脂肪率を知ることで脂肪の量と、脂肪を除いた重さ、除脂肪体重を求めることができる。

 除脂肪体重は、骨や臓器などは運動によって重さが変化しないとの考えから、筋肉量の変化を予測することができる。トレーニングをして体重が増えたとき、体脂肪も増加していたら、筋量が増えたとは考えにくく、反対に体重が減ったとしても筋量が減らず、体脂肪が減っていれば効率よくトレーニングができたことになる。

 それでは“体脂肪は悪者”となるが、体脂肪にも立派な役割がある。第1はエネルギーの貯蔵。たとえば山で遭難にあって食料がなくなっても、体脂肪の多い人は脂肪をエネルギー源として助かることがある。第2に体温調節。体温を調節する際、冷やすときには発汗に頼るが、保温するときは毛穴を塞いで脂肪によるコントロールをする。第3に衝撃吸収。衝突、転倒などのとき、脂肪がクッションになって身体を守ってくれる。

 このように体脂肪は限りなくゼロに近いほうが良いわけではなく、荷物にならない程度の量は確保しておかなければならないだろう。

 体脂肪率のいちばん正確な測定方法は「水中体重法」。手順は、息を吐ききった状態を作り、波を立てないように静かに水中に潜る。そのときの水中の体重と実際の体重から体脂肪率を算出する。しかしこの方法は、大がかりな機材が必要であることと測定に熟練を要し、被験者の苦痛を伴うことから、これに相関の高い間接的な方法が身近に行われている。

 1つは超音波法。両手または両足にごく微量の電気を流し、電流の抵抗の量から体脂肪率を推定する。もう1つは皮脂厚から測定により体脂肪率を測定する。

 これらはどちらも簡単に測定できるが、超音波法は電極に触れる手のひらや足裏の湿り具合で変化する。皮脂厚からの測定法は、慣れた測定者でないと脂肪の厚さを測る際に統一性がもてず誤差が生じてしまうというリスクもある。なるべく測定条件をそろえて、1~3ヶ月ごとに、こまめに測ることで体脂肪率を確認しておこう。

 同じ選手が同じ日に水中法、超音波法、皮脂厚からの測定法で測定をしたとしても体脂肪率が違った数値を示すこともよくあるので測定方法も同一にしておこう。

 さて、体脂肪を増やさない方法だが、中強度の有酸素運動を長く行うことで脂肪の代謝ことや筋量を増やすことで基礎代謝を高め、脂肪を蓄積しにくくするなどがある。それと同時に脂肪の摂取を少なくする工夫をする。

 てんぷら、とんかつの衣をはがす、ラーメンをうどんにする。サプリメントとしてプロテインを用い脂質を少なくタンパク質を摂取する。いずれにしても脂質を摂取しないようにすることと、代謝して使ってしまう両方を考えよう。

ちなみに短距離選手なら体脂肪10%以内、上りを得意とする選手なら5%以内が目標だ。体脂肪をコントロールしながら脂肪の働きも損ねないように上手にトレーニングしよう!